Skip to main content
GDN8 PATIO

中国向けWebサイト制作の確認事項 – Alibaba Cloud

この記事は中国向けWebサイトの相談や制作を担当するメンバーへの備忘です。中国向けWebサイトを制作し静的なファイルをAlibaba CloudのOSSへ置いてCDNから配信した経緯をもとに、同じ条件の案件で詰まりやすい箇所と確認の順序をまとめます。

個々の設定が特別に難しかったわけではありません。ただ配信地域、運営主体、アカウント、ドメイン、ICP登録、外部サービス、ブラウザなど、普段の国内案件では意識せず進められる項目を一つずつ調べる必要があります。

サーバーの地域を決めると必要な登録が変わり、登録主体によって用意するアカウントや書類も変わります。中国本土からの接続確認と複数ブラウザの検証も加わるため、準備せずに進めると公開直前に作業が集中します。

  • ※ この記事は制作と実装のための技術的な整理であり、中国の法制度に関する助言ではありません。実際の申請や事業上の判断はクライアント、Alibaba Cloud、必要に応じて現地の専門家へ確認してください。

最初に確認すること

サーバーやCDNを契約する前に、次の項目を確認します。

  1. 主な閲覧者は中国本土にいるか
  2. 中国本土のサーバーやCDNから配信する必要があるか
  3. Webサイトの運営主体がICP登録の条件を満たし、必要書類を用意できるか
  4. ドメインの登録者とDNS、Alibaba Cloudアカウントを誰が管理するか
  5. 中国本土から利用する外部サービスとブラウザは何か
  6. 現地での表示確認を誰が担当するか
  7. 申請と検証を含む公開スケジュールを確保できるか

ただし「中国の利用者へ見せること」と「中国本土のサーバーから配信すること」は同じではありません。閲覧地域と配信地域を分けて考える必要があります。

中国本土から配信する場合は、ICP登録の主体と必要書類を用意できるかが最初の分岐です。用意できない場合は中国本土のサーバーや中国本土を含むCDNを前提に進めず、香港など中国本土外からの配信を検討します。

配信地域とICP登録

Alibaba Cloudの公式情報では、中国本土のサーバーでWebサイトを公開する場合はICP登録が必要です。中国本土外のAlibaba Cloudリソースを使う場合、Alibaba Cloud経由のICP登録は不要です。CDNの配信地域に中国本土またはGlobalを含める場合は、配信用ドメインにもICP登録が必要です。

配信条件 現在の扱い
中国本土のサーバー 公開前にICP登録が必要
中国本土外のサーバー Alibaba Cloud経由のICP登録は不要
中国本土またはGlobalのCDN 配信用ドメインにICP登録が必要

ICP登録では運営主体、Webサイト、サーバーと接続情報が確認されます。開発側がサーバー設定だけを終えれば申請できるものではありません。運営主体、責任者、ドメイン所有者、必要書類、申請担当は、クライアントと事前に決めておく必要があります。承認前に中国本土のサーバーからWebサイトを公開することはできず、公開後はICP番号の表示と公安登録などの手続きも案内されています。

Alibaba Cloudの海外企業向け案内では、中国本土に登記された支店がある場合はその登録書類を利用できます。支店がない場合は外国企業常駐代表機構の登録証が必要とされています。地域ごとに要件が異なるため案件開始時に確認します。

Alibaba Cloudには中国版のaliyun.comと国際版のalibabacloud.comがあります。2026年6月更新の一般的なICP登録手順では中国版アカウントが必要とされ、国際版アカウントからは申請できないと案内されています。一方で2025年2月更新の海外企業向けページには、国際版アカウントからPCで申請できるという記述が残っています。公式情報の中でも案内が一致していないため、中国版アカウントを前提に準備しつつ申請主体に応じた手順を案件開始時にAlibaba Cloudへ確認するのが安全です。申請画面とアプリは中国語だけです。

ドメインとDNS

ドメインは制作側の一時的なアカウントではなく、Webサイトの運営主体が所有する形にします。登録者名義、レジストラ(ドメイン登録事業者)、DNSを管理するアカウント、更新通知を受け取るメールアドレスまで確認します。

中国本土でICP登録する場合はドメインの登録と実名認証を先に完了し、登録者情報がICP登録主体と一致しているか確認します。一部の地域には例外がありますが、名義が異なると追加書類や変更が必要になる可能性があります。

ここで重要なのはAlibaba Cloudで取得したかどうかではありません。トップレベルドメインが中国の工業情報化部(MIIT)の公表する対象に含まれ、レジストラが中国の電信管理機関から許可を受けているか確認します。Alibaba Cloud国際版のレジストラは中国本土外にあるため、そこで取得したドメインはそのままではICP登録に利用できません。中国本土の許可済みレジストラへ移管し、実名認証を行う必要があります。他社で取得したドメインでもこの条件を満たし、登録者情報がICP登録主体と一致していれば、Alibaba Cloudを接続事業者としてICP登録を申請できます。

DNS設定とICP登録は別の作業です。登録前でもDNSレコードは設定できますが、中国本土のサーバーへ向けたWebサイトはICP登録が完了するまで公開できません。公開時は次の項目をまとめて確認します。

  • wwwの有無と正規URL
  • DNSを変更できるアカウントと担当者
  • CDNへ向けるCNAMEとオリジンの設定
  • HTTPS証明書の発行とドメイン認証
  • 切り替え前のTTLと問題があった場合の戻し方
  • ドメインと証明書の更新期限、通知先

OSSとCDN

以前の案件ではOSSへ静的なファイルを置きCDNを利用しました。アップロードと配信の設定自体はそれほど難しくありませんでしたが慣れないドキュメントの中で次の判断を一つずつ確認する必要があります。

  • バケットとCDNのリージョン
  • 独自ドメインを設定する場所
  • CDNのオリジンと配信地域
  • HTTPS証明書の設定と更新担当
  • キャッシュの期間と更新方法
  • 契約、請求、通知を管理するアカウントとRAMの権限

静的なWebサイトでもHTML、画像、動画、フォントの配信元が分かれれば確認するドメインとキャッシュも増えます。公開後の管理を考えると制作会社の一時的なアカウントへ契約と本人確認を集めることは避けます。Alibaba Cloudアカウントはクライアントが所有し、制作側はAWSのIAMに相当するRAMでOSSやCDNの操作権限だけを受け取る形が無難です。

外部サービス

Alibaba CloudからHTMLを返せてもページ内の外部サービスへ中国本土から同じように接続できるとは限りません。日本からの表示だけで判断せず、利用するホスト名を一旦一覧にして現地環境からの確認が必須です。

  • Webフォント
  • JavaScriptやCSSの外部CDN
  • 動画、地図、SNSの埋め込み
  • アクセス解析とタグ管理
  • CAPTCHAと問い合わせフォーム
  • CMS、検索、ログなどの外部API
  • WeChat JS-SDKで共有表示を設定する場合の公式アカウント、JS接口安全域名、署名用API

一つの接続が失敗しただけでも、本文が表示されない、フォームを送信できない、ローディングが終わらないといった問題につながります。中心情報と主要な導線は外部サービスの失敗だけで利用できなくならない構成にします。

中国のブラウザ環境

中国向けWebサイトではブラウザ確認の対象も増えます。ブラウザによって差はありますがすべてのブラウザとバージョンを同じ深さで確認すると工数が膨らみます。案件ごとに優先順位を決める必要があります。

StatCounterによる2026年7月の中国におけるブラウザシェアは次の通りです。

ブラウザ PC+モバイル PC モバイル
Chrome 52% 48% 56%
Edge 16% 29% 5%
Safari 14% 3% 24%
360 Safe Browser 5% 10%
UC Browser 5% 10%
QQ Browser 4% 3% 4%

は各集計の上位6件に掲載されていないことを示し、利用がないという意味ではありません。

この集計結果は個別サイトの利用者層やアプリ内ブラウザをそのまま表すものではないため対応環境を決めるための参考値として扱います。

Chrome、Edge、Safariとの違い

ChromeとEdgeはBlink、SafariはWebKitを使用します。中国向けでは複数の閲覧モード、独自のモバイル向け内核、アプリ内WebViewが加わります。確認対象は全国のシェアだけで固定せず、利用者と流入経路から選びます。

環境 優先する条件 違いと確認事項
Chrome、Edge、Safari PCとモバイルの基本環境 BlinkとWebKitの表示差を確認する
360 Safe Browser PCでの閲覧が中心 极速模式はChromium 132。互換モードは必要な場合だけ確認する
UC Browser モバイルでの閲覧が中心 独自のU4内核。代表的な実機で主要ページと操作を確認する
WeChatなど アプリからの流入が多い アプリ内WebView。戻る操作、外部遷移、動画、ダウンロードを確認する
QQ Browser、HarmonyOS 利用者層や対象端末に含まれる 必要に応じてQQ BrowserとHuawei実機を追加する

中国系ブラウザでは全ページの完全な一致を前提にせず、主要ページの表示と問い合わせなど重要な導線を優先します。Webフォント、JavaScript、WebGL、動画なども実際に使う機能へ範囲を絞ります。対象外のブラウザやバージョンは事前に共有します。

確認事項

次の項目は実装とは別に対応が必要です。

  • 運営主体、配信地域、ICP登録、アカウント、ドメインの事前調査と問い合わせ
  • OSS、CDN、証明書の設計と設定
  • 外部ドメインとAPIの洗い出し、中国本土からの接続確認
  • 対象ブラウザ、端末、バージョンの合意と表示確認
  • 優先環境での不具合修正と再確認
  • 申請、審査、差し戻しを含む日程調整
  • サイト公開後30日以内の公安联网备案申請と取得後の备案番号表示
  • 公開後の契約、請求、通知、更新、RAM権限の引き継ぎ

中国向けWebサイトの制作で難しいのは、一つの特殊な設定に対応することではありません。普段は別々に進められる契約、申請、配信、実装、検証が互いの前提になります。最初に確認する相手と順序を決め、調査と検証を制作工程へ組み込む必要があります。

参考

  • ※ Alibaba Cloudに関する記載は2026年8月4日時点の公式ドキュメントを基準にしています。ブラウザの利用状況はStatCounterの2026年7月の集計を参照しています。